「炎上」(1時間43分)
2026年4月10日~ 公開中
ジャンル:ドラマ
公式HP:https://enjou-movie.jp/
ひとりの少女が新宿・歌舞伎町“トー横”へと流れ着き、やがて放火に至るまでの150日間を描いた物語。
樹理恵=通称じゅじゅ(森七菜)は、宗教一家の長女。行き過ぎた信仰や教育により、親から日常的に暴力を受けていたが、耐えきれず妹をひとり残し家から逃げだす。
行きついた先は、新宿・歌舞伎町。ここでは、同じく心に傷を持つ若者が多くたむろしており、彼女は快く迎え入れられる。
じゅじゅはこの街で居場所と金の稼ぎ方を手にし、
置いてきた妹を救い、共に生活する為の資金集めを始める。
企画 :★★★★★
ストーリー:★★★☆☆
キャスト :★★★★☆
話題性 :★★☆☆☆
好み :★★★☆☆
鬱度 :★★★★☆
衝撃度 :★★★☆☆
見るべき度:★★★☆☆
〇鑑賞前アドバイス
暴力描写アリ:虐待・流血など/性的描写アリ:バストアップ・曇りガラス越しの裸体など
/その他:薬物・吐しゃ物などの描写
本作はPG12。小学生以下が視聴する際、保護者の助言・指導の上なら鑑賞が可能。
作品としては、決して“トー横”や“犯罪”を推奨するものではないが、“格好いいもの” “逃げ場”として受け入れる10代は少なからずいると思う。大人の目線からすれば、エログロという程キツい作品ではないが、鑑賞する前にはよくご検討を。
〇こんな人にオススメ
新進気鋭の監督作品をチェックしたい/俳優・森七菜ファン/トー横問題に関心がある
~ここからはお時間ある方向け~
1. 無職の映画事情
「炎上」公開日の8時台で鑑賞。
平日の朝ということもあり、箱は小さい目。埋まりは5~6割で客層は女性ちらほら、ほぼ男性。
そう、平日の朝ということもあり・・・
・・・いや!?フードコーナーに溢れる人たち?
そうか、本日はあの“スクリーンを食らう悪魔”の公開日でもあるのか!と。
実際に、上映スケジュールを見たらとんでもない編成がされていた。
映画館および配給会社の “稼ぎにいくぞぉぉお” 感。
この時期の小規模および不人気作品は、どんどん食われていくので、
気になる映画がある人は早めに鑑賞をしよう。
2. 「炎上」感想(ネタバレ含む完全版)
己のせいではあるのだが、ハードルを上げ過ぎた。
結論からすると、「物足りなかったな」と。
親からの虐待~トー横へ逃げる~胡散臭いグループリーダーの存在~街の炎上
あらすじや人物紹介を見ていると、「何となくこんな流れだろうなぁ」という想像の域は超えてこなかった。
個人的にがっかりした点を一つ。
“炎上”に至るまでを描いた本作、最後にどのような形で街の炎上が描かれるのだろうか。
そもそも、街の炎上とはどういうことだろう。
ゴミ箱に火をつける?施設火災?
街が炎上するとは??なにを燃やし、どのように表現されるのか。
冒頭のフルフェイスが使用していた水鉄砲でガソリンを撒くのかな、など考えていた。
結果があの炎上描写・・・。
中途半端な火のCGを見せられるぐらいなら、これが正解なのかもしれないが、
炎上描写からは逃げているように思え、個人的には「これがゴールなのか・・・」という感想。
と、個人的にイマイチな点から書いてしまったが、
基本的に映像や音の使い方など、流石CMプランナー出身の監督と思えるように、
“新しい映像表現を打ち出したい”という想いを強く感じた。
応えるように、キャストの森七菜さんは素晴らしく、
やはり特筆すべきは、“親友・三つ葉”を演じたアオイヤマダさんではないだろうか。
監督の言う、「まだ見たことがないアオイヤマダ」を確かに見ることができた。
こういった“イメージとかけ離れた配役”は、大好物。
さらに脳をやられたのが、トー横の若者たち。
年中地べたに座っているため、おしり部分が異様に汚いスカート。
アジトにはゴミが散乱し、そんな中で歯を磨く少女が生理的に気持ち悪くなる。
そして彼らの日常会話には、本当に中身がない。
遊びといえば、感情を言い合うリズムゲームや、ペットボトル倒し。
娯楽の幅もとにかく狭い。
しかし、その世界には抑制するものは何もなく、仲間と群れ、時には睡眠薬でアガり、
“今イチバン人生を楽しんでいる”気分になっている。
見ていてこちらの頭が悪くなる。
そんな彼らのリーダーは、彼らより少し頭が良い。
その為、神様ヅラで搾取する側に回る。
アジトのごみを片付けるよう促すのではなく、「差し入れだ」と腕で机の上のゴミを落とし、
荷物を置く描写でこのリーダーの人間性が十分に理解できる。
「彼らとは一生距離を取りたい」と素直に感じてしまった。
私自身、トー横通いの経験がないので、あれがリアルなのかわからないが、
そう思わせるほどの妙な説得力があり、しっかりとした取材やコーディネーターとのやりとりも密にされたのであろう。
p活する親父たちにも、吐き気がした。
これが同じ日本なのかと、少し悲しく、少し空しくなった。
そういった意味では、本作はしっかりとトー横問題への興味や関心を持たせてくれた。
私たちは大人は何をすれば良いのか、政治なのか、施設寄付なのか。
一方で不安なのは、やはり10代がこの映画に触れることである。
良くも悪くも、興味の扉が用意された本作。
人にはススメないし、今年ベスト級作品ではないが、
個人的に見た価値はあったかな。これは間違えなく“令和の映画”だった。
最後に。
主人公・じゅじゅにとって、このトー横炎上までの150日間に、救いは何もなかった。
最後にスマホで妹からの安否確認メッセージを見る。
救いはないが、妹がいる限りまだ生きる意味はある。
「生きてさえいれば良い」と語ったマスミ(広田レオナ)、三つ葉との関係性を絶てとアドバイスをしたリス、彼らと寄り添っていればまた違う道があったのかもしれない。


